あまかけるの巣

今はうんちでも化石になるから。

「好奇心からです」

 ご周知の通り(サイドバーにリンク貼ることでお知らせとする厚い面でございます)、あと2週間でいよいよタイにおよそ1年間派遣されます。その前の研修として、3月下旬から先週の土曜日まで、まるまる1ヶ月埼玉某地に引きこもっておったわけですが、その思い出話をぼちぼちと。

 少し話を逸らしますが、どうも自分の記憶方法は、断片的な瞬間として記憶する、というものみたいです。例えば私がAさんとお食事に行って、少し固い話から入り、雑談へと移り、その後居酒屋でどんちゃん騒ぎした、という一日があったとしましょう。この日の記憶が私の頭の中に残ります。後日、私がこの記憶を再生しようと試みるときには、その日のある時間、ある瞬間の出来事が思い出されます。例えばAさんがふいにフォークを置いてまじめな顔になった瞬間。あるいは、Aさんのある言葉が発せられた瞬間。そうした瞬間瞬間の出来事の記憶が、写真あるいは短い動画のファイルとして存在して、それらがなんとか「一日」というあいまいなフォルダに収まっている、というのがだいたい私の記憶再生時の感覚です。

 いえ、もしかしたら「何を当たり前のことを言ってるの?」とおっしゃる方もいるでしょうが、これが意外とみなさん、各々違う方法で記憶を呼び出しているのではないかな、と思い立ったので言語化してみました。はい、以上です。

 今日もその瞬間の出来事の話です。

 

 派遣される前の研修には、タイ・ミャンマーシンガポールに派遣される日本語パートナーズ(以下、Nihongo Partnersの頭文字を取ってNPと略しますね)計80名以上が同時に参加しました。これがほんとに面白い。文字通り南から北まで、さまざまな世代のさまざまな職業の方がおいでです。学生として参加しているのが半分と、ううむと思うところはありましたが。それでもこれだけ強烈に「自分と違う」と思える人と、「同じNPだから」という理由で話しかけに行けるのは、本当に貴重な体験だったと思います。

 

 その中に、とある大阪の企業を勤め上げNPに参加したおじさまがいらっしゃいました。初めてお目にかかったときの第一印象も、「ああ、この人はザ・商人だな」でした。その方を始め若い方何名かと、お酒を交わす機会を持ちました。

 そのときに、私と同い年の大学生の女性が自分の将来について、「ベンチャー企業に行きたいと思っている」という話をし始めました。ふーん、なかなか勇気のある人なんだなーと思ってゆるく話を聞いていると、先ほどのおじさまが相談相手になって、というより説得相手になって?、「自分が生きるのにかかるコストを現実的に考えなさい」と話し始めました。

 

 おじさまの説得?はとても分かりやすいものでした。まずは自分が他人の仕送り等に頼らず生きていくために必要なお金、現在自分が「生きる」という選択を行っていることにかかっているコストを洗いざらい書き出します。家賃や生活費はもちろん、遊びのお金まで現実的に考えていきます。

 さて自分が生きるために必要とするこのコストを稼ぐために、自分は何をすべきかを考えます。そのコストが自分の得るべき収入、得るべき資金ということになりますが、この方法がやはりなかなか思いつかない。思いついたとしても、全くコストに到達しない。

 おじさまは最後、「そのコストを稼ぐためには、自分ひとりでは足りない。他人の助けがいる。信頼がいる。その信頼を手っ取り早く稼ぐ方法が、大学に行かせてある程度の知名度のある会社で勤めることだと考えて、君の親御さんは君を大学に行かせてるんとちゃうんかな。大企業、なめたらあかんよ」と締めました。おー、なるほど。そういう考え方もいいなあ、と思いました。

 

 で、いろいろと話していくうちに、今度はそもそもなぜこの派遣に参加したのかを全員自白することに。全員といってもおじさまと先ほどの女性、もともと日本語教師をやられていた20代の男性と私の4名ですが。

 20代の男性の方は、普段からお話を伺っていますが、教師としての熱意をビシビシと感じる方です。やはりこの方はこの自白でも、「まず自分がこの派遣に参加した理由は3つあって…」と、しっかりとした考えと覚悟を持って参加されているのだろうと思わせる答えを出しました。

 

 さて、いよいよ自分の番になったときに、私は自分でも予想外の答えを口走ったんですね。

 自分がこの派遣に参加した理由として、最も上位に来る理由は何だろうと考えたわけです。今回の派遣が決まるまでには、教授や先生、友人などいろいろな人に相談をし、助言をいただいてきました。もちろんこの派遣の前に面接もしましたから、そこできちんとした考えを持っているということを伝えるべく言葉も用意しました。けれども、自分に最も近い理由は何だろうと考えた末に、「好奇心からです」とだけ答えました。

 言った後に、「ああ、自分は好奇心で選んでたのかあ」と妙に納得してしまいました。タイに住む人たちが、どんな生活をしているのか、どんな暮らしをしているのか。どんな思い出を持ち、どんなことを夢見ているのか、夢見ていないのか。それは自分が無自覚に受け入れてしまえるものなのか、それとも面食らうほど自分の持つ価値観と違うものなのか。そして、なぜそうなっているのか。どのようにそうなったのか。そういったことに興味がある。今回は現地でいちおうでも職を得るわけだから、個人旅行やインターンなどよりも密接にその社会に関わることができる。きっともっと深く深く自分の好奇心の向く方へ掘っていけるだろう。だからこの研修では、第一に語学に力を入れる。第二に、ある程度きちんと職務を全うするために(自分には教師としての経験がないから)、教師になる・教育に関わるために学ぶべきこと、経験すべきことをする。

 と、こんなにはっきりとは言っていませんが(笑)、そんなようなことを適当に伝えました。

 

 という、エピソードでした。やっぱり自分の口から「派遣に参加した理由は好奇心からです」という言葉が出たのが、びっくりでした。俺はそんなことを考えていたのか…と、どこかよそよそしく感じた夜でした。